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卵子や精子の寿命は?妊娠しやすいタイミングや質を保つ為の習慣もご紹介

卵子や精子の寿命は?妊娠しやすいタイミングや質を保つ習慣をご紹介

今現在妊娠したいと考えている女性や、いつかは出産したいけれど今は考えられないという女性にとって気になる卵子の寿命。メディアなどでも度々取り上げられ、気にかかっているという人も多いのではないでしょうか。
特に、現在妊活をしている女性は、卵子の寿命や受精可能時間を知ることで妊娠しやすいタイミングも分かりやすくなるでしょう。
この記事では、卵子の寿命について詳しく解説します。合わせて、妊娠の仕組みや精子の寿命についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

妊娠についておさらい

卵子や精子の寿命について知る前に、妊娠とはどのような状態を指すのか、卵子や精子の成り立ちや仕組みについておさらいしておきましょう。

妊娠の定義とは

排卵から着床までの流れ
性交した際、精子は一度子宮を通り過ぎて卵管膨大部を目指し卵管を進み続けます。卵管膨大部に排卵され受精能力を保った卵子があれば受精し、細胞分裂しながら約1週間かけて子宮へと移動を始めます。
子宮に辿り着いた受精卵は子宮内膜に潜り込み、しっかりと根を張ることができれば着床完了です。受精から着床までは約12日間かかります。
妊娠とは、卵子と精子が受精し、かつ子宮内膜に着床した状態を指します。卵子と精子が受精しても着床しなければ妊娠は成立しません。

卵子について

卵巣内での卵胞の成長
卵巣では、原始卵胞と呼ばれる細胞が生理周期に関係なく約90日かけて卵子へと成長しています。成熟し卵子となったものだけが、生理周期に合わせて左右どちらかの卵巣から排出されます。これが排卵です。
排卵される卵子は、原則として一度の排卵に1個とされますが、稀に複数の卵子が排卵されることもあり、複数の卵子が同時に受精・着床すると多胎妊娠が成立します。(1つの卵子に複数の精子が受精することでも多胎妊娠が起こる可能性があります)
卵巣から排卵された卵子は、卵管の端で掌のような形をしている卵管采という器官に取り込まれ、卵管膨大部に留まり受精を待ちます。
卵子の受精可能な期間内に精子と巡り合うことができれば受精し細胞分裂をしながら子宮に向かいますが、そうでない場合は卵子の寿命が尽きた後にマクロファージ(貪食細胞)に分解されます。分解された卵子は、体内に取り込まれたりおりものに混じって排出されたりし、その後受精卵が着床しなかったことにより起こるのが、不要となった子宮内膜が排出する生理(月経)です。
卵子は加齢によって徐々に質が低下していくことが分かっており、ゆくゆくは卵子を生成する働きが止まり排卵が停止、やがて閉経します。

精子について

精子は精巣にて1日で数千万~1億個が作られていますが、精巣内に貯蔵できるのは約4~10億個です。精巣内では休眠状態を保ちながら射精されるタイミングを待っており、排出されることなく寿命が尽きた精子は精巣内で吸収されます。
1回あたりの射精で1,500万個/mlの精子が排出されることが自然妊娠可能な目安と考えられており、精子の運動率は40%以上が望ましいです。
これまで、卵子の老化や寿命については古くから研究や議論が続けられていましたが、近年の研究で精子にも老化があることが分かってきています。特に、精子は老化によって運動率の低下が顕著に見られる傾向にあるため、妊娠のためには卵子と精子、両方の質を保つことが重要だと考えられています。

卵子の寿命とは

卵子には寿命があり、細胞が生きている間に受精する必要があります。しかし、卵子が生きているならいつでも受精できるのかと言えば、そうではありません。
ここからは、卵子の寿命と受精機能が保たれている時間について解説します。

卵子の寿命は約24時間

卵子の寿病は約24時間と言われています。個人差はありますが、排卵後約24時間後には細胞の働きが停止し、マクロファージによる分解が始まります。卵巣と卵管采は至近距離にあるため、排卵されてから受精を行う卵管膨大部までは、それほどタイムラグは発生しないと考えられるでしょう。

卵子が受精できる時間は約8~10時間

卵子の細胞が働きを停止するまでの時間、つまり寿命自体は約24時間と言われています。しかし、受精するには質の良い細胞を保つ必要があり、寿命が尽きかけて質の低下した卵子において受精できる可能性はそう高くないでしょう。
卵子が受精できる質を維持できる時間は約8~10時間と言われています。質の良い卵子と精子が受精・着床してはじめて妊娠が成立するため、妊娠を望むのであれば卵子が健康で質を保てる8~10時間の間に受精できるよう性交を行う必要があるということです。

精子の寿命とは

精子の寿命は約72時間と言われていますが、これはあくまで女性の膣内に入った時の寿命です。精子は乾燥に弱く、外気では数時間程度で細胞が死滅してしまうと言われています。
また、女性の膣内は酸性の粘膜で覆われており、精子は酸にも弱いため、精子全てが約72時間生き残る訳ではありません。
1度の射精で排出される精子は約1億個を超えることもありますが、卵子の待つ卵管膨大部に辿り着けるのは数十~数百個と言われており、精子の排出量や運動率が低ければ、卵管膨大部まで辿り着けないこともあるでしょう。

精子が卵子に辿り着くまでにかかる時間

卵子の実質的な受精可能時間は約8~10時間、精子の寿命は約72時間ということが分かりましたが、約60μmという人の目では認識できない程小さな精子にとって卵子までの道のりは長く険しいものです。
運動率の高い精子であっても、射精されてから卵管膨大部に辿り着くまでに約5~6時間かかると言われています。運動率が低く動きの遅い精子であれば、もっと時間がかかることもあるでしょう。
つまり、排卵されたタイミングで性交をすると、卵子が受精可能な時間は約2~5時間しかありません。

妊娠するために重要なのは卵子・精子の質とタイミング

卵子と精子の寿命について知ると、妊娠するのはとても難しいことのように思えてきますよね。
妊娠するためには受精可能な卵子と精子の質を保ち、受精可能なタイミングで卵子と精子が出逢えるようタイミングを合わせて性交することが大切です。
妊娠の確率を上げるためには、卵管膨大部で精子が待機しているところに卵子が排卵されてくる状態が理想的と言えるでしょう。
そのため、排卵日の前日〜当日にかけて性交することで、妊娠の確率を上げることができると考えられています。

排卵のタイミングを知る方法

妊娠率を上げるために、女性は排卵のタイミングを把握しておくのがよいでしょう。排卵のタイミングを知るには以下の方法があります。

基礎体温から推測する

女性の基礎体温の推移
排卵はホルモン周期に影響されて起こるため、基礎体温を毎日継続して測ることで排卵日の予測が可能です。
基礎体温は低温期と高温期に分かれており、丁度境目となるタイミングで排卵が行われます。継続して基礎体温を測定し、排卵日が近くなるタイミングで性交することで妊娠の確率をアップしやすくなるでしょう。

排卵予測検査薬を使って推測する

排卵日が近くなると黄体形成ホルモンの分泌が盛んになることから、尿中の黄体形成ホルモンを計測して排卵を予測する排卵予測検査薬があります。
排卵予測検査薬で陽性が出ると約40時間以内に排卵が起こることが予測されるため、妊娠しやすい性交のタイミングを測りやすくなるでしょう。排卵予測検査薬はドラッグストアなどでも購入できます。

卵子の質ってなに?

男性の場合、精子の量や運動率によって精子の質を測定することができますが、女性の場合卵子の質を計測することはできません。それでも、卵子の質が重要だと言われるのには、以下の理由があります。

卵子が作れる量は生涯決まっているから

卵子の元となる原始卵胞は、生まれた時からその数が決まっており、増えることはありません。生まれた時には約200万個ある原始卵胞は思春期を迎える頃には20〜30万個、30代の後半には2万個にまで減少すると言われています。
また、1個の卵子を形成するのに消費している原始卵胞は約1,000個と言われているため、数万個あれば充分とは決して言えません。原始卵胞の残量が1,000個を切ると閉経が始まってしまいます。
原始卵胞の量はAMH検査で調べることができますが、これは卵子の質とは無関係です。しかし、原始細胞がなければ卵子が生まれないことを鑑みると、影響は大きいと言えるでしょう。
より質の良い卵子を作り出すためには、起源となる原始卵胞が欠かせず、原始卵胞には限りがあることを理解しておきましょう。

卵子の質は加齢によって低下するから

卵子の質が悪いと、寿命が短くなる、受精する能力が低くなる、受精しても正常な細胞分裂ができなくなる、などの影響が見られます。
これは2003年に発表された論文(※) にも明記されており、染色体の不分離(正常に細胞分裂できていない状態)の発生率は、母親の老化と関係があると発表されています。しかし、卵子の質が老化によって低下するメカニズム自体は解明されていません。
Maternal aging and chromosomal abnormalities: new data drawn from in vitro unfertilized human oocytes

卵子や精子の質を保つために気を付けたい6つの習慣

卵子や精子の質が低下してしまうメカニズムは未だ解明されていません。しかし、人体の老化には活性酸素が大きく関係しているため、活性酸素を抑えることで老化を防ぎ、しいては卵子や精子の質を保つことができるのではないかと考えらえています。
卵子や精子の質を保ちたい人が気を付けるべき生活習慣について紹介していきます。

1.喫煙

タバコに含まれるタールやニトロソアミンは、活性酸素を発生させる働きがあります。また、タバコには約70種類の発がん性物質が含まれると言われており、DNAを損傷させるリスクもあると考えられています。
卵子や精子の質を保ちたいのであれば禁煙が推奨されます。副流煙によって周囲にもリスクが拡大されてしまうため、禁煙するのであればパートナーと共に取り組むのがおすすめです。
また、妊婦にとって喫煙は早産や胎盤異常、胎児の発育不全などのリスクがあります。今後、妊娠を望んでいるのであれば妊娠前から禁煙に取り組みましょう。

2.過度な飲酒

アルコールは適量であれば血行を促進するなどのメリットもありますが、過度に飲酒してしまうと卵子や精子の質の低下を招いてしまいます。
特に、女性は男性と比較するとアルコールの分解能力が低い傾向にあります。これは女性ホルモンの働きによって肝臓のアルコール分解能力が低下するためです。アルコールが長時間体内に残ることでホルモン分泌量が低下し、月経不順や無月経・無排卵などのトラブルが起こるリスクもあります。
男性の場合も、アルコールを分解した際に発生するアセトアルデヒドによる精子の質の低下リスクが危険視されています。その他、アルコールによって神経反射が低下するとインポテンツになることもあり、性交自体がスムーズに行えなくなるリスクもあるため注意が必要です。

3.睡眠不足

睡眠中はさまざまなホルモンが活発に分泌されるため、卵子や精子の質を保つためには充分な良質の睡眠をとることが大切です。女性の場合、睡眠時間が6時間以下になると充分なホルモンが分泌されず、生理不順や無排卵などのリスクが高まると言われています。
男性に関しても、睡眠障害を持つ男性は精子の質が低下するという研究結果が論文(※)として報告されています。
特に、睡眠時に分泌されるメラトニンというホルモンには、強い抗酸化作用があり活性酸素の除去作用も期待されるため、卵子や精子の質を保ちたいと考えている人は充分で良質な睡眠をとるよう心掛けてみてください。
Association of Sleep Disturbances With Reduced Semen Quality: A Cross-sectional Study Among 953 Healthy Young Danish Men

4.過度なストレス

強いストレスを感じると、私達の体内ではストレスに対抗すべく副腎皮質ホルモンが分泌されます。しかし、副腎皮質ホルモンを分泌する過程で活性酸素が発生してしまうのです。
なるべくストレスを受けないように生活することも、卵子や精子の質を保つためには欠かせません。

5.適度な運動

適度な運動は、活性酸素を抑制する働きがあります。日常的に適度な運動を摂り入れることは、老化を防ぎ卵子や精子の質を保つことに繋がるでしょう。
しかし、一方で運動の内容によっては活性酸素の発生を促してしまうこともあります。特に、過度な運動や無酸素運動は活性酸素を発生させやすいです。運動を行う際には、体のストレスにならない程度の有酸素運動に留めておくのが望ましいと言われています。
一方、ハードな運動や筋トレを趣味として行っている人の場合、それらの運動を抑制することがストレスになってしまうこともあるでしょう。どうしてもハードな運動や筋トレなどをしたい場合には、活性酸素を取り除く効果が期待できる抗酸化作用のある食べ物や飲み物を積極的に摂るなどのフォローを行うことも大切です。

6.抗酸化作用が期待できる食事

抗酸化作用のある栄養 摂取のポイント 食材
ビタミンA 油と摂取すると吸収率アップ モロヘイヤ、にんじん、かぼちゃなど
ビタミンC 加熱すると破壊されやすく、茹でると水に溶ける。可能なら生食がおすすめ 赤ピーマン、グレープフルーツ、ブロッコリー、じゃがいもなど
ビタミンE 酸化しやすいため、なるべく早く食べる アーモンド、かぼちゃ、卵、ほうれん草、大豆製品、コーン油など
ポリフェノール 蓄積しないので小まめにたべるのがおすすめ ブルーベリー、大豆製品、オリーブオイルなど
カロテノイド 油と摂取すると吸収率アップ 緑黄色野菜、マンゴー、パパイヤ、とうもろこし、わかめ、エビ、かに、鮭など

活性酸素を除去するには、以下の抗酸化作用を持つ栄養を積極的に摂ることが推奨されています。

  • ビタミンA
  • ビタミンC
  • ビタミンE
  • ポリフェノール
  • カロテノイド

それぞれの栄養には効率良く摂取する食べ方などもあるため、食べ方にも工夫して食生活に摂り入れてみてください。

卵子凍結保存 で質の良い卵子を保存しておく選択も

卵子の質は年齢と共に低下してしまいますが、近年女性の社会進出が進みライフプランを考えると妊娠を希望する時期が遅くなってしまうという悩みも多くきかれます。
晩婚化、出産の高齢化も進むなか、質の良い卵子を維持するのが難しいというケースもあるでしょう。
そんな中、注目されているのが卵子凍結保存による、質の良い卵子の保存です。いざ妊娠をしたいと考えた時に、卵子の質が低下していた場合のリスクを考え、早い段階で卵子を採取し凍結保存しておく選択をする人も増えつつあります。

【卵子や精子の寿命を意識しても妊娠しない時は】気軽に不妊相談を

卵子や精子の寿命について紹介してきましたが、タイミングを合わせても中々妊娠しない場合は、まず気軽に産婦人科や不妊専門クリニックに相談してみるのがよいでしょう。
特に、女性の場合は生理に関するトラブル(子宮内膜症やチョコレート嚢腫など)が不妊に関係していることも少なくありません。
適切に排卵が行われているか、卵子の元となる原始卵胞は充分に残っているかなど、産婦人科でも体の状態をチェックすることができます。
近年、5組に1組は不妊に悩んでいるとも言われています。まずは、気軽にご相談ください。

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この記事の監修
Sola Clinic院長 渥美 陽子
渥美 陽子
Sola Clinic院長
あなたと家族の”みらい”に向けて、明るい笑顔と真心、そして安心の医療体制で、安らぎと感動を提供いたします。産科、婦人科にかかわる心配事は、程度にかかわらず何でも「Sola Clinic」までご相談にいらしてください。