無痛分娩を検討している方の中には、「産後の回復が早いと聞くけれど、本当なのかな?」と疑問を抱く方も多いでしょう。
このコラムでは、無痛分娩の産後の流れと回復の特徴、そして自然分娩がもたらす産後のメリットについても解説します。
出産方法を考える際の参考にしていただければ幸いです。
まずは無痛分娩の基本をおさらい!
無痛分娩とは、背中から麻酔を投与して陣痛の痛みを和らげて行う出産方法です。
「無痛」という名前がついていますが、完全に痛みが消えるわけではありません。
赤ちゃんを産み出す「いきみ」には、ある程度の陣痛の感覚が必要なため、適度な痛みを残して出産のタイミングを感じ取れるように調整されています。
使用される麻酔は「硬膜外麻酔」。
陣痛が進んだ段階で背骨の近くにある硬膜外腔という部分に細い管を入れ、そこから麻酔薬を注入します。
無痛分娩の主なメリットには以下のような点が挙げられます。
- 陣痛の痛みによる体力の消耗を抑えられる
- 会陰切開や縫合の際の痛みを感じにくい
一方で、麻酔の効き方には個人差があり、分娩時間が長引いたり、発熱・頭痛などの副作用が出たりする場合もあります。
無痛分娩は産後の回復が早いって本当?
無痛分娩を選ぶ理由の一つとして、「産後の回復が早い」と聞いたことがある方もいるでしょう。
無痛分娩後の流れと、回復が早いといわれる理由、注意したいポイントを見ていきましょう。
無痛分娩後の流れと行われる処置
無痛分娩直後の処置は、自然分娩とほぼ同じです。
会陰切開を行なった場合はその縫合も必要になりますが、麻酔が効いているため痛みは感じにくいでしょう。
出産後、麻酔の効果が切れるまでにはおよそ1〜3時間かかるため、カテーテルを抜いたあともしばらくは分娩室で安静に過ごします。
分娩室で休んだあとは病室に戻り、さらに4~6時間程度の安静が必要です。
出産で体力を消耗しているため、医師や看護師の指示に従ってしっかり休むことが大切です。
歩行を始める際は、転倒防止のため看護師が付き添い、初めてのトイレも看護師がサポートします。
産後の回復が早いといわれる理由
出産は、陣痛やいきみによって想像以上に体力を使います。
無痛分娩では陣痛の痛みが緩和されるため、痛みに耐えるための体力を温存できるのが大きな特徴です。
その結果、出産直後の疲労感が軽く、回復が早いと感じる方が多い傾向があるといわれています。
ただし、あくまで痛みが軽減されることによる効果であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
無痛分娩でも体の疲労は蓄積することに注意!
無痛分娩で痛みや疲労が軽減されたとしても、出産そのものが体に与えるダメージは避けられません。
また、麻酔の効果が切れた後、急に会陰切開の痛みや筋肉痛を感じることになり、むしろ産後に疲労が急増したと感じる方もいます。
産後の体は急激な変化の最中にあります。
ホルモンバランスの乱れによる情緒不安定や、子宮からの出血、骨盤の緩みなども起こりやすい時期です。
そのため、無痛分娩であっても産後はしっかり休むことが必要です。
自然分娩が産後の回復にプラスになることも!

痛みによる体力の消耗を防げる無痛分娩。
では、自然分娩は無痛分娩に比べて回復が遅いのかといわれると、実はそうとも限りません。
自然分娩にも産後の回復を助ける要素があります。
その代表的なものが、出産時に大量に分泌される「オキシトシン」です。
愛情ホルモン・幸せホルモンとも呼ばれるこのホルモンは、産後の体と心にさまざまな良い影響をもたらします。
このオキシトシンは以下のような働きを持っています。
- 子宮の収縮を促して分娩をスムーズにする
- 産後の子宮回復を助ける
- 痛みの緩和作用もあり、後陣痛が軽減する
- 母乳の分泌を促進する
自然分娩ではこのオキシトシンが分娩中から産後にかけて多く分泌されるため、子宮の回復が進みやすく、結果として産後の回復が早い傾向があると考えられています。
さらに、授乳や赤ちゃんとのスキンシップでもオキシトシンの分泌は高まり、体の回復と母子の絆を深める効果も期待できます。
また、オキシトシンには抗ストレス作用もあり、心の安定を保つ効果があるとされています。
分泌量が多いと、赤ちゃんへの愛情が自然と湧き、育児を前向きに楽しみやすくなります。
その結果、「お世話が楽しい → 自分の気分が安定 → 赤ちゃんがよく寝る → さらにお世話が楽になる」という良い循環が生まれるのです。
一方で、無痛分娩や分娩促進剤を使用する場合、出産時のオキシトシンの分泌が妨げられてしまうことがあります。
そのため、ぜひ自然分娩のメリットにも目を向けた上で、無痛分娩・自然分娩を選択いただきたいなと思います。
オキシトシンの詳しい働きについてはこちらのコラムでも詳しくご紹介しています。
ぜひあわせてご覧ください。
オキシトシンが出産に与える影響とは?しあわせホルモンの作用を解説
無痛分娩も自然分娩も産後は安静が必須なのは同じ!
無痛分娩は痛みを軽減し、出産時の体力消耗を抑えられるため、産後の回復が早いといわれることがあります。
とはいえ、出産はどの方法であっても体への負担が大きく、無痛分娩でも自然分娩でも母体の回復には時間が必要です。
産後はホルモンバランスの変化や子宮の回復などが進む大切な時期。
自宅に戻ってもしばらくは家事を控え、しっかり休息を取ることが何より大切です。
特に自然分娩や授乳で分泌されるオキシトシンは、子宮の回復や心の安定を助ける働きもあります。
体をいたわりながら赤ちゃんのお世話に集中できる環境を整え、焦らずゆっくり回復を目指しましょう。
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