ホーム > コラム > 妊娠・出産 > 産後うつ予防は幸せホルモン「オキシトシン」で心の安定を

産後うつ予防は幸せホルモン「オキシトシン」で心の安定を

子育てに悩む母

出産を控えている方や産後間もない方の中には、「産後うつになったらどうしよう」という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

産後うつは決して珍しい病気ではなく、出産した女性の約1〜2割が経験するといわれています。

 

今回のコラムでは、産後うつがどのような病気なのかと予防方法、そして「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンとの関係について詳しくお伝えします。

 

症状が現れた場合の対処法もご紹介しますので、安心して出産・育児に臨むための参考にしていただければと思います。

 

 

産後うつとは?

産後うつは、出産後3カ月頃までの間に発症するうつ病の一種で、出産した女性の1〜2割が経験するといわれています。

気分が沈み、育児や家事への気力や自信がなくなる状態が特徴的な症状です。

 

主な症状には次のようなものがあります。

  • 眠れない
  • 気分が落ち込む
  • 強い不安に襲われる
  • 睡眠中に途中で目覚めて起きてしまう
  • 食欲がない
  • 理由もなく涙が出る
  • 疲れて生きる気力がない
  • 家事や仕事が進められない
  • 決断力がなくなる

 

このような不安定な状態がほとんど毎日、2週間以上続く場合は注意が必要です。

 

産後うつが起こる背景には、出産による急激なホルモン変化、慣れない育児による疲労、睡眠不足、周囲からのサポート不足などがあります。

症状を放置すると悪化し、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、母子の愛着形成にも影響を与える可能性があるため、早期発見・早期対応が欠かせません。

 

産後うつとマタニティーブルーとの違い

産後うつは、マタニティブルー(マタニティブルーズ)と混同されることがありますが、これは全く異なるものです。

 

マタニティブルーは出産後3~10日後までの間に不安や涙もろさが現れるものの、長期間は続かず自然治癒するため治療は不要です。

出産により女性ホルモンが急激に減少することが影響しているといわれています。

 

一方、産後うつは2週間以上症状が続き、適切な治療やサポートが必要になります。

 

 

産後うつを予防するには?オキシトシンが関わるというのは本当?

産後うつを予防する最も効果的な方法は、「がんばらないこと」です。

そして、できないことにとらわれず、今できていることに集中しましょう。

 

具体的な予防策としては、まず十分な休息を取ること。

パートナーやサポートしてくれる方がいたら、思い切って赤ちゃんを預けましょう。

赤ちゃんと外にお散歩に行ってもらって、3時間くらいゆっくり眠ったら気持ちがすっきりしたということもよくあります。

 

次に、家事の負担を軽くすること。

やる気が出ないときは食事はデリバリーを頼んでみる、買い物は休日のまとめ買いやネットスーパーを活用する、掃除はパートナーがいるときに一緒にパーっと終わらせる、そうすると気分もすっきりします。

 

気分転換はとても大事です。

ときには育児を家族に任せて、友達と会っておしゃべりをしたり、美容室に行く、マッサージを受けるなど楽しい時間を過ごすことも大切な予防策の一つです。

 

オキシトシンと産後うつ予防の関係

産後うつには「オキシトシン」というホルモンが深く関わっています。

オキシトシンは「愛情ホルモン」「幸せホルモン」とも呼ばれ、分娩や授乳で分泌されるホルモンです。

 

オキシトシンには抗ストレス作用があり、心の安定をもたらす働きがあります。

オキシトシンは出産にも大きく関わっています。

子宮で十分に育った赤ちゃんを産み出すときに、子宮が収縮することをサポートするホルモンがオキシトシンです。

 

赤ちゃんを育てることはときに大変なこともあります。

赤ちゃんが泣いている理由がわからなかったり、おっぱいを与えたり、抱っこの時間が長くなったり‥自分のペースで進められないストレスを抱え、自律神経のバランスを崩し、産後うつを発症する方も多いです。

 

実は出産の時、オキシトシンが多量に分泌されます。

オキシトシンが分泌されると赤ちゃんと自分の境がなくなり、赤ちゃんがかわいいという愛着が湧いてきます。

この愛着が「赤ちゃんのお世話をすること」を楽しいと思える助けになります。

 

楽しいと人は機嫌が良くなります。

その気持ちは波動として赤ちゃんに伝わり赤ちゃんの機嫌も良くなります。

 

よく寝る赤ちゃんは、お世話する人の機嫌を受け取ってよく寝るというわけです。

【赤ちゃんのお世話が楽→自分の機嫌が良い→赤ちゃんがよく寝てくれる→赤ちゃんのお世話が楽】というサイクルができます。

 

逆のサイクルは【赤ちゃんのお世話が大変→ストレスでイライラしたり落ち込む→赤ちゃんがよく泣く→赤ちゃんのお世話が大変】というサイクルです。

ここに陥るとなかなか抜けるのが大変になります。

 

残念なことに、無痛分娩や分娩促進剤を使用するとこのオキシトシンの分泌が抑制されてしまいます。

ですが、母乳育児をすることでもオキシトシンの分泌が促されるので母乳育児も産後うつの予防につながります。

 

自然分娩や母乳育児を選択することで、オキシトシンの恩恵を受けやすくなります。

選択肢がある場合、参考にしていただければと思います。

 

オキシトシンの詳しい働きや出産への影響については、「オキシトシンが出産に与える影響とは?しあわせホルモンの作用を解説」で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

 

 

産後うつと考えられる症状が出てきたら?

休む母と赤ちゃんを抱っこする父

産後うつと思われる症状が現れた場合は、一人で抱え込まず、まずは夫や家族に話しましょう。

区役所の保健師や助産師も、あなた自身の健康や子育てで困ったときの相談に応じています。

 

それでもまだ気分が落ち着かないときは、かかりつけ病院(産婦人科、小児科、内科など)で相談や治療を受けられます。

場合によっては、精神科医師による専門的なうつ病の治療が必要となるケースもあります。

 

産後うつの治療とは

産後うつの治療で最初に行われるのは「環境調整」です。

これは、お母さんがゆっくり休める環境を整えることです。

家族はお母さんのペースに合わせ、がんばり過ぎないよう声をかけ、家事・育児を協力して行います。

 

励ましの言葉よりも、体力や気力の回復のための休養や睡眠を優先させることが大切です。

 

家族のサポートが得られない状況であれば、自治体などの産後ケア事業を利用して体を休めることも選択肢の一つ。

多くの市町村では新生児訪問サービスを提供しており、助産師・保健師・看護師が訪問して相談に応じてくれます。

 

 

産後うつ予防は無理をしないこと!オキシトシンも効果が期待できる

産後うつは出産を経験した女性の1〜2割が経験する身近な病気です。

 

産後うつを予防するために最も大切なのは自分や周りを責めず、「ま、いいか」という適当さと、今あること、できていることに集中して満足することです。

睡眠時間を確保する工夫もしてみましょう。

 

もし症状が現れた場合でも早期の環境調整や治療で改善しますので、一人で悩まず家族や専門家にまず相談してみてください。

 

自然分娩や母乳育児で分泌されるオキシトシンには抗ストレス作用があり、産後うつの予防効果が期待できます。

出産や育児の選択肢の一つとしてぜひ知っておいてください。

 

Sola Clinic」は横浜市都筑区にある女性医師による産婦人科クリニックです。

当クリニックは、お母さんが持っている力を引き出す自然なお産(Joyful birth)をサポートしています。

スタッフも全員女性ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

コラム一覧に戻る
この記事の監修
Sola Clinic院長 渥美 陽子
渥美 陽子
Sola Clinic院長
あなたと家族の”みらい”に向けて、明るい笑顔と真心、そして安心の医療体制で、安らぎと感動を提供いたします。産科、婦人科にかかわる心配事は、程度にかかわらず何でも「Sola Clinic」までご相談にいらしてください。