出産後、赤ちゃんとの最初の触れ合いとなるカンガルーケア。
「どのようなケアなのだろう」「本当にメリットがあるの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回は、産後のカンガルーケアの内容やタイミング、赤ちゃん・ママ・パパへのメリット、そして実施時の注意点についてご紹介します。
これから出産を控えている方のお役に立てればうれしいです。
産後のカンガルーケア(早期母子接触)とは
カンガルーケアとは、生まれたばかりの赤ちゃんを温かいタオルに包み、ママやパパの素肌の胸に抱くケア方法です。
正式名称は「早期母子接触」や「早期皮膚接触(Skin-to-Skin Contact)」と呼ばれます。
カンガルーケアは、保育器が不足していた1970年代後半のコロンビア・ボゴタで、早産児(通常より早く産まれてしまった赤ちゃん)を母親の胸で温めたことが始まりとされています。
この取り組みによって新生児死亡率が明らかに低下しました。
赤ちゃんを温めるために始めたケアでしたが、あきらかに新生児死亡率が低下したことから、どういうエビデンスがあるのか?研究が進められました。
その結果、生後すぐに母親と直接スキンシップをとることで、母親の常在菌群が赤ちゃんに移行して外部からの細菌感染を予防していること、また腸内細菌の育成も行われていることがわかりました。
これらの作用により、赤ちゃんの免疫力が強くなり、赤ちゃんを守ることにつながると考えられています。
現在ではNICU(新生児集中治療室)での早産児ケアに限らず、正期産で生まれた赤ちゃんにも出産直後から行われる一般的なケアになっています。
親が赤ちゃんを胸に抱く姿がカンガルーの子育てを連想させることから、この名称が使われています。
出産直後にカンガルーケアを行う理由
生まれたばかりの赤ちゃんは、出産直後から約2時間は覚醒した状態が続きます。
この時間帯は目を開け、光や顔の輪郭をなんとなく認識しつつ、おっぱいを探すような反応を見せます。
このタイミングで肌の触れ合いを行うことで、親子の絆がより深まりやすくなるのです。
出産直後は子宮内から外の世界へと急激に環境が変化するため、赤ちゃんは呼吸や体温、心拍が不安定になりやすい時期です。
ママやパパの肌の温もりや心拍を感じることで安心し、新しい環境に順応しやすくなります。
また、ママの胸に抱かれることで赤ちゃんが自然に乳房を探し始め、母乳育児のスムーズなスタートにもつながります。
産後にカンガルーケアを行うメリット
カンガルーケアは赤ちゃんだけでなく、ママ・パパにもさまざまな良い影響があります。
赤ちゃんへのメリット
ママの肌の常在菌に触れることは免疫力の発達にも関わり、感染症の予防に役立ちます。
肌と肌の触れ合いにより、赤ちゃんの体温が安定し、低体温を防ぐ効果があります。
ママやパパの体が自然な温度調節の役割を果たすことで、赤ちゃんの呼吸や心拍、血糖値も安定します。
また、心音や呼吸のリズムを感じることでリラックス効果が得られ、泣く時間が短くなったり、深く眠れたりします。
ママ・パパへのメリット
カンガルーケアを行うと、オキシトシンやプロラクチン、エンドルフィンといった「幸せホルモン」が分泌され、親子の絆を深める働きがあります。
特にママにとってオキシトシンの分泌は、母乳の分泌を助け、産後の心の安定にも関わります。
赤ちゃんを肌で感じることで「守りたい」という気持ちが自然に育まれ、産後うつの予防につながるという研究報告もあります。
パパにとっても、早い段階から父親としての自覚が芽生え、育児への関わりが深まるきっかけになるでしょう。
ママの処置中にパパがカンガルーケアを行うケースも多く、その後の関係づくりにも良い影響があります。
オキシトシンの良い効果については「産後うつ予防は幸せホルモン「オキシトシン」で心の安定を」のコラムもぜひご覧ください。
産後のカンガルーケアのやり方・タイミング
カンガルーケアを行うタイミングは、赤ちゃんが最も覚醒している出産直後から2時間以内が理想的なタイミングです。
経腟分娩・帝王切開に関わらず、ママと赤ちゃんの状態が安定していれば、できるだけ早い時期に始めます。
赤ちゃんは軽く拭いたあと温かいタオルや毛布で包み、裸のままママの胸に抱きます。
ただし、状況によってはカンガルーケアをすぐに実施できない場合もあります。
帝王切開後の処置や赤ちゃんの緊急対応が必要なときは、処置が終わって母子ともに落ち着いてから行うことになります。
ママによるカンガルーケアが難しい場合は、パパが行うことも可能です。
赤ちゃんの状態が不安定なときは、医療スタッフがママの手を赤ちゃんの近くに置くなど、可能な範囲で触れ合いをサポートします。
カンガルーケアを実施するかしないかは病院によっても異なります。
希望する場合は、バースプランに記載し、事前にスタッフへ伝えておくとスムーズです。
産後にカンガルーケアを行う際の注意点

メリットの多いカンガルーケアですが、注意すべき点もあります。
元気に生まれた赤ちゃんでも、生まれた直後は呼吸や体温、循環がまだ安定しづらく、状態が急変することがあります。
また、先天性の病気は出生直後には気付きにくい場合も。
そのため、カンガルーケアは必ず助産師や看護師の見守りのもとで行い、赤ちゃんの顔色や呼吸をしっかり観察することが大切です。
抱くときには、赤ちゃんの鼻や口が塞がれないように位置を整えます。
気になる点があれば遠慮なく医師や助産師に相談してくださいね。
産後のカンガルーケアは親子の絆を深める大切な時間
カンガルーケアは赤ちゃんの免疫力を上げて感染から守るために大切なケアです。
また、赤ちゃんの体温や呼吸を安定させ、親子の絆を深める大切な時間です。
オキシトシンの分泌により母乳育児の助けとなり、産後うつのリスク低減にもつながるとされています。
ママだけでなくパパも参加でき、家族で赤ちゃんを迎える温かな時間となります。
実施の際はスタッフの見守りのもと安全に行い、不安があれば事前に相談しておきましょう。
もし出産直後に行えなくても、落ち着いてからゆっくり触れ合うこともできます。
焦らず、お子さんとの大切な時間を過ごしてくださいね。
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